『源 頼朝』
EL GENERAL YORITOMO
吉川英治作
~七百年の武家社会を築いた
《武将 頼朝》を詠う~


彷徨い人 中島孝夫

スペイン語訳:
アントニオ ドゥケ ララ

篠笛(横笛)『京の夜』
福原一笛 演奏より

《24.夏隣り》

2021年3月13日(更新)

* ~以仁王を
    めぐる計画の全貌が
     平家へ漏れてしまいぬ~ * 頼朝の
   もとに 京より急を告げる
    早打ちが到達しぬ


* ~無念なるも
    取りあえず お知らせする
     くれぐれも自重されますように~ ~~ * ~「平家に
     弓を引く者は みなこうぞ」
      と思いあがらせてしまいたり~ ~~ * ~以仁王と
    頼政の旗挙げの大事は
     一朝にして壊滅しぬ~ ~~ * ~以仁王は
    流れ矢にあたり
     亡くなられてしまいぬ~ ~~ * ~平家の
    軍勢二万余騎に囲まれ
     頼政は自刃して果てぬ~


* 頼朝は
   政子を伊豆山へ移し
   「断」を胆にすえ 威厳をつくろいぬ ~~ * 頼朝に
   その危機が「出発」への
    勇気と決断を抱かせたり ~~ * 頼朝は
   己の生命が 危うくなりている
    ことを自覚しぬ ~~ * 頼朝は
   終日ものも云わず
    眸にも力を欠き 坐りていたり ~~ * 頼朝の目に
   頼政の精霊が
    浮び上がりて見えてきたり


* 盛長は
   頼朝の名で 檄を飛ばしぬ
    ”時節到来 旗下に参ぜよ” ~~ * 頼朝は
   家人の盛長を 源氏の武士の
    狩出しに旅立たせぬ ~~ * 時政が
   真夜半に 頼朝を訪い
    明け方まで密儀を持ちぬ