『 アルハンブラ物語 ~ 3 』を詠む 中島孝夫
ワシントン・アービング 著 平沼孝之 訳
『 CUENTOS DE LA ALHAMBRA-3 』 Washington Irving
スペイン語訳:アントニオ ドゥケ ララ
2021年2月6日(更新)

≪アルハンブラ物語~三人の美しい王女の伝説≫

~第2章~
ALHAMBRA -3-
LA LEYENDA DE LAS TRES HERMOSAS PRINCESAS








 * 離宮は
    地中海を眼下に見下ろす
     サロブレーニャの丘にありたり







 * 美しき
     宮殿は堅牢無比な砦に
       包み込まれていたり







  * 三人の
    王女はこの宮殿で
      子供時代を過ごすことになりぬ







 * 王女たちは
     この宮殿で女奴隷に
       かしずかれ暮らしぬ







 * 王女たちは
     すくすくと育ち
       美しき少女に成長したり







  * 三人の
     王女には性格の違いが
       兆し始めていたり







 * 長女の
     サイーダは果敢な気質で
       妹たちをリードしぬ







 * サイーダは
     好奇心と探求心が旺盛で
        極め尽くす気質なり







  * 次女の
     ソライダは美しいものには
       敏感に感動したり







 * 末っ子の
     ソラハイダは心根が優しく
       臆病で感じやすかりし







  * 離宮での
    歳月は何事もなく
      平穏に巡りていたり







 * ある日のこと
    姉のサイーダは岸壁の望楼より
     海を眺めていたり







 * 一艘の
     ガレー船が浜辺を目指し
       グングン近づき来たり







  * ガレー船は
     砂浜に乗りつけ モーロの
        兵士たちが降り立ちぬ







 * 兵士たちは
    数人のキリスト教徒の
     捕虜たちを引き立てていたり







 * 好奇心の
    強い姉は 昼寝をしている妹二人を
     揺り起こしぬ







 * 三人は
    格子窓に顔をつけ 息をひそめて
     のぞき見したり







 * 捕虜の中に
    立派な身なりのスペイン人の
     騎士が三人いたり







  * いずれも
    誇らかな若者で気品のある
      顔立ちをしていたり







 * 鎖を
    胴に巻き付けられしも
      剛毅な気性が滲み出でぬ







 * 王女たち
    三人の若者を見つめいれば
      胸の高鳴りを覚えぬ







  * 王女たち
    生まれて初めて 血気盛んな
      凛々しい男性を目にしたり







 * 長女
    感嘆の声をあげぬ
    "あの真紅の衣装の騎士…とても高貴よ!‟







 * 次女も
    負けずに叫びぬ"緑の衣装の騎士も
     優雅で素敵だわ!“







 * 末娘は
    心の中で思いぬ"青い衣装の
      騎士がいちばん素敵"







  * 王女たち
    捕虜たちが視界から消えるまで
      見つめいたり







 * 三人は
    ため息をつき 寝椅子に横たわり
      夢想にふけりぬ







  * 聡明な
    乳母は王女たちのいつもと違う
      様子に気づきたり







  * 王女たち
    乳母に望楼より見し事を
      事細かに語りたり







  * 乳母は
    王女たちの初々しい語り口に
      乗せられてしまいたり







 * 乳母は
    感に堪えぬ声で言いぬ
     "お可哀想に お若い身で!"







 * "故国では
     あの方たちが囚われたと知り
       美しきお姫様方は"







 * "胸の
     張り裂ける思いで 日々を
      過されておられることでしょう"







 * 乳母は
    高貴なスペイン女性の美貌や
      魅力について語りたり







 * 王女たちは
    乳母の語りに ため息つきつつ
      聞き入りていたり







 * 乳母は
    王女たちが成熟し
      結婚適齢期なのだと気づきぬ








                      彷徨い人 中島孝夫