『源 頼朝』
EL GENERAL YORITOMO
吉川英治作
~七百年の武家社会を築いた
《武将 頼朝》を詠う~


彷徨い人 中島孝夫

スペイン語訳:
アントニオ ドゥケ ララ

篠笛(横笛)『京の夜』
福原一笛 演奏より

《25.雨地・月天》

2021年3月26日(更新)

* 本軍の
   時政以下の者は
    山木家の土塀門へと近づきぬ * 宵月がのぼる頃
   八十余騎の黒き影が
    ゆるぎ出しぬ


* 時政は
   頼朝に約束しぬ”山木兼隆を
    討ち取りたれば” ~~ * 頼朝は
   大日堂の縁に立ち
    山木家の空を眺めいたり ~~ * 山木判官
   時政の声に愕然とし
    太刀ひっさげて駆け出でぬ ~~ * 山木判官は
   時政の”山木兼隆を討て”
    の声を耳にしぬ ~~ * 山木判官は
   眠りていたが”夜討 夜討”の声で
    首をもたげぬ


* 頼朝は
   暗き山笹の小径を
    館の方へ降りて行きぬ ~~ * 頼朝は
   次第に 火色を増している空を
    じっと見つめていたり ~~ * 青い月空に
   曙光の光が かすかに
    うっすらと昇りたり ~~ * ”ただちに
    目代屋敷より 火の手をあげる故
     それまで待たれよ”