「おもむくままに」 スペイン短歌紀行 中島孝夫 夏 2002年 


<トルヒーリョ TRUJILLO
Castilloへの石畳の道
トルヒーリョの町はエストラマドゥーラの台地の真ん中にある。真夏の太陽の下、
光と陰の鮮烈なコントラストに目まいを感じる
Castillo
荒々しい岩山の高台に城壁がそびえ連なりトルヒーリョの町を見下ろしている。
城壁の上に登りて目閉じればレコンキスタの攻防よぎる
日暮れ時くずれ落ちたる城壁を烏の大群飛来し占拠す
Bandada de pájaros
 acampa
 en las desvencijadas ruinas
 del castillo
 a la caida de la tarde.

殺伐な石ばかりなる城跡に“勝利の聖女”が祭られている
エストレマドゥーラの原野
強風の吹きすさぶ城壁の上を端から端までめぐる。
城壁の見張り台より眺むれば360度の原野ひろがる
Del panorama
 los 360 grados
 se contemplan
 cuando se sube
 del castillo
 a la torre vigía.
                       (Castillo)
城壁の釣鐘
強風に吹き飛ばされそうな釣鐘が目にはいる。
見張り台に緑青ふきたる釣鐘が台地の風に寂しく揺れる
El badajo verdinoso
 de la torre vigía
 en alas de la brisa
 ondula triste
 sobre la faz de la tierra.
                       (Torre vigía)
城の脇門
炎天下でますます熱く燃える若きカップルは、
城門の陰で抱き合うカップルのかたえそ知らぬ顔でよぎりぬ
ピサロの銅像とサンタ・マリア教会
灼熱の陽を浴びてピサロの銅像はぽつんと立っている。
アラブのスペイン侵略、スペインのペルー征服、ともに血なまぐさし
灼熱の陽を浴ぶピサロの銅像が孤独な姿で広場に立てり
Bajo un sol achicharrante
 el solitario bronce de Pizarro
 domina la plaza.
               ( Bronce de Pizarro)
廃墟の館
石畳の坂道を上りつめると、
四つ星のホテルに改修工事中の廃墟の館をそっと覗きみる
水遊びする子供達
くねくねした路地を歩いていると、
アラブの浴場跡に水わきて男の子らは泳ぎ戯れる
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