「おもむくままに」 中島孝夫 短歌紀行 スペイン歴史探訪シリーズ


- 特別編 スペイン歴史探訪 -

20064月中旬、2組のご夫婦(森川様 根本様)と一緒に、スペイン歴史探訪の旅に出かける。
パリ経由、バルセロナ
2)グラナダ(2泊)‐コルドバ(2泊)セビーリャ2泊)‐
マドリッド(
2泊)‐チンチョン(2泊)<アランフエス‐トレド(日帰)/ セゴビア
(日帰り)>
 の各世界遺産と史跡を巡っての2週間の旅となる。

★写真をクリックすると大きくなります。

【バルセロナ Barcelona
 カタルーニャ地方の首都で、人口はスペイン第2位の170万人を抱える。地中海に
面して有数の港を持ち、スペイン随一の工業・商業都市である。バルセロナは歴史
上、スペインの地中海への窓口というより、むしろ地中海都市、カタルーニャ地方
の中心都市として存在してきた。

 バルセロナの町の中心であるカタルーニャ広場(Placa de Catalunya)の南側には
旧市街が現存し、それを取り囲むように新市街が広がっている。’92年のオリンピ
ック開催時の再開発により、バルセロナは、特に、モンジュイックの丘が大きく変
貌した。

<ランブラス通り  Las Ramblas
旧市街の目抜き通りで、カタルーニャ広場と港の中心に立つコロンブスの塔を
結んでいる。かってはこの地域が城壁に囲まれていた。

足早にわき目もふらず抜け出でるランブラス通りの雑踏の中を
<コロンブスの塔  Monument a Colom
塔の高さは60mで、’88年のバルセロナ万博を記念して建てられた。

春風に吹かるるコロンの右の手の指差す彼方は果てしなき夢
<ポルト・ベイ  Port Vell
コロンブスの塔より港に沿って歩き、海に架けられた遊歩道をわたる。

潮風に迎えられての昼食はワインに添えたシーフードなり

<カテドラル  Catedral

旧市街で最も古いゴシック地域に建てられている、13世紀~14世紀の重厚な
ゴシック様式の回廊付の大聖堂である。

カテドラルの神聖なる屋根の上から360度の眺望楽しむ


<カサ・ミラ  Casa Mila
グラシア通りに建てられている曲線を持つ独特の形状の建物が、石切り場
(La Pedrera)と呼ばれているガウディの建築で、一部アパートにもなって
いて、現在人も住んでいる。

不可思議な曲線だらけの建物は山と峰とを表現せしとや

<サグラダ・ファミリア聖堂  Temple de la Sagrada Familia

最終的には、18本の鐘楼がそびえるという筆舌に尽し難いガウディの傑作

キリストの降誕表す彫刻は自然と写実の結晶より生まれしと

聖堂の天に伸びゆく鐘楼は奇才ガウディの永遠の夢
Los campanarios del templo
 camino del cielo,
 sueño eterno
 de Gaudí,
 el genio.
            
(Templo de la Sagrada Familia)

<スペイン村  Poble Espanyol

‘92年の万博の際に創られ、スペイン各地の家屋や工芸品が展示されている。
65歳以上の入場者には割引がある。
窓口でマヨール、マヨールMayor, 老人と声あげてパスポートを
喜び差し出す


<軍事博物館  Museu Militar

かってこの要塞では多数の政治犯、反体制派知識人が処刑されたという。

この城は要塞として築かれしも時経て獄舎となりぬとぞ聞く

大砲の照準は今も紺碧の波穏やかな海原に向く


<バルセロナの印象・感想>

森川ご夫妻:

やはりガウディの建築が最も印象的でした。狂気の炎と冷計算が渾然一体
となって迫って
きました。しかし毎日あれまれた生活とはどんなものかと
いささか寒気がしました
 


根本ご夫妻:
 街中を歩いていると、突然ローマ時代に築かれた城壁が立ちはだかり、カテド
ラル他、古代から中世の建造物が立ち並ぶゴシック地区。人間がここまででき
るかと考えさせられるようなサグラダ・ファミリアを頂点とするモデルニスモ様
式の建築物。近代的に整備されたウオーター・フロントやモンジュイックの丘
等。古いものと新しいものとが渾然一体となっている。芸術性豊かで、活気のあ
るこの街の丘の上から、生涯初めて、明るい陽光の下に青々とした波静かな地中
海を目のあたりにしたのも、望外の幸せだった。(久照)


 ランブラス通りでは、数多くのパフォーマンスをする人や、花屋のスタンドが
並び、日本と同じ春の花が彩りと香りを楽しませてくれる。
スペイン最初の昼食は海辺のレストランで、海鮮パエー
リャやワインを楽しむ。
<サグラダ・ファミリア>
 
鐘楼の螺旋階段を最上階へと昇る。途中、所々の窓から眼下に市街が見える。
階段の中心から真下を見ると、深い井戸の底に吸い込まれるようでこわい。博物
館の石膏の模型を見て、ガウディが幼少期から自然に触れ、感性を育み、今、大

聖堂がここにあるのだと納得することができた。バルセロナの街路樹の多くはプ
ラタナスで、この木もガウディの彫刻に取り入れられて
いる(純子)

【グラナダ Granada】 
イスラム支配下の時代、1236年にコルドバがレコンキスタのキリスト教徒に奪回
されて以後、グラナダはイベリア半島におけるイスラム最後の王朝(ナスル朝グラ
ナダ王国)として繁栄を極めた。13世紀にはアルハンブラ宮殿、アラブ式庭園ヘネ
ラリフェなどが建造された。レコンキスタのカトリック両王は、ナスル朝最後の王
を降伏させ、1492年グラナダに入城した。これにより約780年にわたるイスラム
支配が終わる。カトリック両王はこれを記念し、グラナダに王室礼拝堂を建造した。
<裁きの門  Puerta de Justicia
いかめしい名の頑丈な門を潜りぬけると、自ずから厳粛な気分になる

裁く人裁かれる人の頭上には裁きの門がのしかかりくる

<チノス坂  Cuesta de los Chinos

右手にアルハンブラ宮殿を見ながら、ダーロ川Darro沿いに歩き、川を渡ると
チノス坂に入る。坂道を上りつめて木陰で一息つく。

せせらぎの清らな音色を伴奏にさえずる野鳥は樹林のまにまに


<グラナダスの門 Puerta de las Granadas

ゴメレス坂(Cuesta de Gomerez)を下っていくと、がっしりとした門がある。

堅牢な小さき門は敢然と大なる車の進入拒む


<アルハンブラ宮殿 Palacio de la Alhambra
堅牢な城壁内には、宮殿、要塞、モスク、造幣所などがあった。ナスル朝宮殿は
イスラム建築の伝統を守り、池や噴水を設けたパティオ(中庭)を中心に構成さ
れて、漆喰、タイル、大理石による繊細な装飾と、アラビア文字、唐草模様の壁
画装飾、そして、精緻な鍾乳石飾りに埋め尽くされている。
赤茶けしアルハンブラは夕闇に愁いひめたる姿をみせる
Alhambra, la roja,
 a la caida de la tarde
 muestra su rostro
 e melancolía invadido.

朝もやのアルハンブラの静寂をやぶる野鳥の鋭き鳴き声
El agudo canto de las aves
 rompe el silencio
 de la Alhambra
 cubierta por el velo
 del amanecer.
                  
(Alhambra)

-アルカサバ  Alcazaba
レコンキスタから王国を守るため、イスラムの軍事技術を集約した要塞であった。

アルカサバは難攻不落の要塞なるも柔弱な王はネバダに逃る

グラナダの町を眼下におさめつつレコンキスタの進攻憶う

翳をもつアルハンブラの変遷を見守るネバダの山並み白し
Perlada Sierra Nevada,
 eterno vigilante
 de la Alhambra
 veladas transiciones.
                  
(Alcazaba)

-ワシントン・アービングの部屋-
18世紀の王位継承戦争やナポレオン戦争で、アルハンブラは荒れ果て、忘れ去
られてしまったが、米国人作家ワシントン・アービングの「アルハンブラ物語」
により、再びよみがえった。

アービングの幻想世界に浮遊してアルバイシンの町並み眺む

-二姉妹の間  Sala de las Dos Hermanas

天井の鍾乳石飾りは、宮殿随一の精密さを持つといわれている。

美しき二人の姉妹の面影を瞼にうかべ周囲を見まわす


-ライオンの中庭  Patio de los Leones

ライオンの口を形どった噴水から冷水が流れ、とりどりの花の咲き匂う中庭
であったという。

ライオンの口より噴き上ぐ清水の涼しさ羨みライオン睨む


<ヘネラリフエ Generalife
ナスル朝宮殿の離宮で、水と緑に包まれた夏の別荘であった。

夏の宵涼風にふかれ美女抱くモーロの王のふくよかな顔
パルタルの庭園そぞろに愛でゆけばヘネラリフェが微笑み迎える
Jardines del Partal
 distraidamente admirando ,
 Generalife nos recibe
 sonriente.
                 
(Generalife)
 

<ブドウ酒の門 Puerta de Vino

ブドウ酒の門を境に、アルハンブラ宮殿内は、ナスル朝宮殿の住宅街と
要塞アルカサバに分かれていた。
              

夕暮れ時あわき紫色の石門を寂寞の風しずかに吹けり
Al atardecer
 por el mármol violáceo
 sopla un viento silencioso.
             
(Puerta del vino)

<カルロス5世宮殿 Palacio de Carlos V

この宮殿は、1526年、スペイン国王カルロス5世のアルハンブラ宮殿への
新婚旅行の際、建設が決められたという。

場違いと思える円形の宮殿はカルロス5世の置き土産なり


<サン・ニコラス展望台 Mirador de San Nicolas

アルバイシンにある展望台より、アルハンブラ宮殿の夜景を楽しむ。

闇のなか朱色に連なるアルハンブラを心の写真に何枚も撮る


<王室礼拝堂 Capilla Real

レコンキスタのカトリック両王(イサベル女王と夫のフェルナンド2世)
の遺骨が安置されている。

安らかに眠れるイサベル目を覚ます観光客のけたたましさに


<セマナ・サンタ(聖週間)Semana Santa

キリストがエルサレムに入った「枝の日曜日」から受難の日「聖金曜日」、
そして、復活する「聖日曜日」までの1週間、キリスト像やマリア像の
御輿行列が町に繰り出される。

ソプラノの慈悲を託す澄みし声がアルハンブラの闇に流れる

炒めたるかぼちゃの種をぼりぼりと啄ばみながら行列Procesion)を待つ

いつ来るかわからぬままに行列を気長に待つはマリアを見んため


<アディオス、アルハンブラ  Adios, Alhambra

去りがたきアルハンブラに別れ告げイスラム最初の王都(コルドバ)
へ向かう


<グラナダの印象・感想>

根本ご夫妻:

 何といってもイスラム王朝の最後の拠点であったアルハンブ宮殿である。
ワシントン・アービングは、著書「アルハンブラ物語」
で、「アルハンブラは、
外から眺めれば、いくつもの塔や胸壁の
雑然たる石の集積物で、構想上の統一
性にも、構造上の優雅さにも欠けて
いる。
 
こんな殺風景な城塞の内部に、あふれかえるばかりの優雅と美とが眠ってい
ると、
だれが思うだろうか。」と書いている。
 私自身も実際にこの目で確かめて来ることができて、想像力をき立てられ
た。
アルカサバから、雪をいただくシエラ・ネバダ山脈を間近に仰ぐことがで
きたのも収穫であった。
(久照)


 グラナダ最初の夜、セマナ・サンタの行列を待つ人の波をかき分け、アルバ
イシンの高みに登り、ライトアップされて、静寂な闇の中になんとも幻想的に

浮かび上がっているアルハンブラ宮殿に、しばし眺め入った

 
夜空の満月が印象的な冷え冷えとした空間に立っていると、最後のイスラム
の王朝の王として君臨したが、やがて城を明け渡したボアブディルの悲しみが
伝わってくるようだ。
 ヌエバ広場に戻ると、深夜零時の教会の鐘の音とともに、音楽隊、キリスト
マリアの御輿の行列がゆっくりと進んできた。(純子


森川ご夫妻:
 アルハンブラ宮殿は緑豊かで、一般的に乾いたスペインのなかでは特にしっ
とりとした印象でした。しかしそれはあまりにも
繊細、優美で巧緻であり、
歴史を知っているせいか、
ナスル朝の最後を飾る花のように耽美的なうつくし
さでした。水
ときれいに刈り込まれた木々で飾られた中庭の風情はすばらしい
もの
でした。

コルドバ CÓRDOBA 2006 PRIMAVERA

711年にイベリア半島に侵攻したイスラム教徒は、アル・アンダルスと命名した
この新しい領国の首都にコルドバを選び、西方イスラム世界の首都とした。
アル・アンダルスの最盛期(756年~1031年)に、コルドバは西ヨーロッパ随
の規模に発展した。

スペインの世界遺産を巡らんと春らんまんのコルドバに向かう

Buscando de España
  de la Humanidad Patrimonio,
  en florida primavera
  camino de Córdoba.

<メスキータ Mezquita

東方のバグダットやコンスタンティノーブルとその威容を競い、4回の拡
工事で収容能力25000人に達したという大モスクである。

おびただしき柱の数を数えんとわれ意気込むも即座に諦らむ

メスキータの柱の下を黙々と行きつ戻りつ途方にくれる
Bajo los arcos
 de la Mezquita
 voy y vengo
 de perplejidad lleno.

メスキータの幾何学的な配列の柱に不安おぼゆる
Bajo las filas geométricas
 de columnas y arcos,
 copia infinita,
 un sentimiento
 de intranquilidad.
                  (Mezquita)
 
<ローマ橋 Puente de Romano

アル・アンダルスの最盛期、この地で開花した多くの学問がラテン語に翻訳
され、後世に伝えられた。その意味で、ローマ橋は文化の架け橋でもあった。

ローマ橋は長き務めに疲れ果て一休みせんと幕を垂れてる


<カラオーラの塔 Torre de la Calahora

ローマ橋を警備するために造られたという。

外壁に亀裂入りて崩れんと見ゆるも堅固な要塞なりしや


<ユダヤ人街 La Juderia

コルドバの経済を支えてきたユダヤ人の居住区には、迷路のように小道が
入りこんでいる。

にわか雨頭上にぽとり降りきたり慌て飛び込む高級料亭
Sobre la cabeza
 unas gotitas.
 A toda prisa
 de un restaurante
 enfilo la entrada.
 Era de primera....
                 (Restaurante en la Judería)

<ポトロ広場 Plaza de Potro

ポトロとは若馬のことで、市の紋章になっている。

白昼の旅籠屋ポトロの前に立てばドン・キホーテの蘇えりく

昼食のワインに酔いてぽとぽととポトロ広場に辿りつきたり
Nublado por el mosto
 del ágape
 pata a pata
 alcanzo del Potro
 la Plaza.
                 
(Plaza del Potro)

<セマナ・サンタ Semana Santa

行列を見んと走れば今まさにマリアの像が眼前を過ぐ

行列を先回りして待たんやと小道急げば道に迷いぬ

親切な地元の翁に案内され角を曲がれば行列の見ゆ

 

<ビアナ宮殿 Palacio de Viana
ようやくたどり着いた宮殿は、日曜祭日のため閉館でがっくり。
力ぬけ口あんぐりと宮殿を眺めいれば背後に声あり

初対面の翁の家に招かれるおもむくままの出会いなりしや

<コルドバの印象・感想>
森川ご夫妻:

 メスキータもセマナサンタの行列も印象的でしたが、ビアナ宮殿の近くに
住む老人の家で見せてもらったパティオは見事
なものでした。美しくアレン
ジされ、なめるように?かわい
がって育てた鉢植えの数々、きれいに掃除さ
れ落ち葉ひとつ
ない床と真っ白いテーブルと椅子、お行儀のよいテリアと自
慢の古ラジオのコレクッション。
 
見ず知らずの外国人のわわれを招きいれてくれた人なつっこい老人と
外出から知人
を連れて帰宅し、われわれに会って目を丸くしていた老婦人。
生活を楽しんでいるスペイン人の生活の一部を見ることがきました。     


根本ご夫妻: 
 セマナ・サンタの行列の後になり先になったりしてついて行き、土地の人々
のこの祭りに対する熱い思いを身近に感じとったり、通りすがりのお年寄り

に石敷きの路地をたどって自宅まで案内されて、美しい花で飾られたパティ

オで交歓のひとときを過ごす機会を得た。(久照


<メスキータとオレンジの中庭> 大モスクには、くさび形のアーチが数多く
並び驚く。しかし、内部はカテドラルとして改造され、イスラム教とキリスト
教が共存して不思議な空間を感じる。
 
コルドバにもオレンジの花と果実をつけ、芳しい香りを放つ街路樹が他の
土地と同じように多く見られる。
()                              

【セビーリャ Sevilla
グアダルキビル河岸に位置するアンダルシア最大の都市で、スペインで唯一
の内陸港を持つ。
セビーリャ王国はイスラム勢力により1023年に築かれ、その経済的繁栄は
13世紀に頂点に達する。1248年レコンキスタのフェルナンド3世がセビー
リャを奪回する1503年以降、セビーリャは植民地貿易を独占し、新大陸
の金銀はセビーリャ造幣局で鋳造される。16世紀スペインで最大の商業都市
に発展したセビーリャは、スペインの黄金世紀の文化の中心でもあった。
大航海時代のマゼランやベスプッチはセビーリャ港から航海にでた。
<カテドラル Catedral
スペインで最大、ヨーロッパで3番目に大きな規模の大聖堂の前に立つ。

スペインの最大規模の聖堂をため息もらし仰ぎ眺める

カテドラル、オー カテドラルと呟きつつきらびやかな主祭壇を見る

コロンブスの偉業をうやまい喜々として棺をかつぐ国王たち

Reyes transportan
 de Colón el féretro
 en muestra de alegría
 y respeto
 por la gran empresa,
 colombino hecho.
                      (Catedral)


<ヒラルダの塔 Giralda

セビーリャの象徴である塔に登る。高さは98mとのこと。

鐘楼の鐘が鳴るなり耳元で時計をみれば午後一時なり

ぐるぐると螺旋状なるスロープを一気に登れば王都が眼下に
Caracola imitando
 la rampa,
 al llegar a la cumbre
 la ciudad cortesana
 bajo los ojos.
                 
(Giralda)
 

<アルカサル Alcazar

レコンキスタ後にキリスト教徒の王たちが、イスラム芸術の粋を実現
しようと、イスラム時代の王城を華麗な宮殿に改築した。

 

-大使の間  Sala de Embajador
イスラムの芸術の粋を極めたる大使の間の華麗さに黙す
Ante la elegancia
 en su cenit
 del arte islámico,
 Salón de Embajadores,
 esplandor y belleza,
 la palabra se quiebra.
             
(Alcázar. Salón de Embajadores)
-庭園 Jardines de Alcazar

庭園の干上がりし池で面妖な顔した石の像に睨まる


<馬車>

カテドラルの前で、市内観光の馬車の御者に声をかけられ、あした乗るよと
返事すると、
御者曰く、明日は雨だよ今乗りな、言われるままに馬車に乗り込む

(翌日は雲ひとつなき青空の小春日和に苦笑いする)

馬車に揺れ馬蹄の響きの心地よさに何時しかうとうと居眠りするわれ


<黄金の塔 Torre del Oro

13世紀初め、川の通行を検問するために建てられた十二角形の塔で、かっ
ては、塔の上が、その名のとおり、金色の陶器レンガで輝いていたという。
現在は海洋博物館になっている。

中世の海洋学を学びし後にベンチでごろりとまどろみいる人

 

<スペイン広場 Plaza de Espana
‘29年に造られ、広場を囲む建物の下に、スペイン各地の歴史がタイル画に
描かれている。

広大な半円形の広場にはこれぞスペインの趣きのあり
 

<サンタ・クルス街 Barrio de Santa Cruz

かってのユダヤ人街で、白壁の家の中庭はとりどりの花で飾られている。

この街は地図を片手に歩けども気づけば逆の方角にいる


-ムリーリョの家 Casa de Murillo

うろうろと小道たどればムリーリョの住みし屋敷が目の前にある


-ムリーリョ庭園 Jardines de Murillo
たおやかなギターの音色にいざなわれ小径に座り耳かたむける
Seducción del suave
 rumor de la guitarra.
 Sentado en el callejón
 embriaguez del oido.
                
(Parque de Murillo)
 
<美術館 Museo de Bellas Artes

ムリーリョの絵画をはじめ、セビーリャの派の画家たちの絵画が展示されている。

ムリーリョの描くマリアに魅せられて絵に見入る女は身動きもせず

セビーリャ派の画家の絵から爛熟の街の香りが立ち昇りくる
De los cuadros
 de la escuela sevillana
 se desprende
 un fuerte aroma
 de ciudad apasionada.
                 
(Museo Murillo)

<新幹線 AVE-Alta Velocidad Espanola

セビーリャからマドリッドまで、2時間半の快適な新幹線の旅を楽しむ。

ゆったりと座席にすわり朝食のサービス受けつつ草原眺む

 

<セビーリャの印象・感想>
根本ご夫妻:
 スペイン第4の都市では、南国的な陽気さ、明るさが街に溢れているような
気がした。壮大な大聖堂や、作られた時代が違ういくつかの庭園をもち、イス

ラムとキリスト教文化が混じり合った建築様式と言われるアルカサル、ヒラル

ダの塔からの
360度の大展望、スペイン広場等、かっての繁栄ぶりを今に伝え
るスケールの大きさを感じた。(久照) 


<観光馬車>約1時間近くの市内観光。ひずめの音がリズミカルで心地よく、
南国の太陽の下、風に吹かれながら美しい町並みと広大な公園の緑の中を巡り、

幸せなひとときを過ごした。


<美術館>ムリーリョのマリア様に親しみ、また、過去南米大陸から持ち帰っ
た銀で製造した多数の展示品が陳列され、スペインに多量の銀が流入し、ヨー

ロッパの市場経済が変動し、貴族の生活を脅かしたとの説明文が添えてあった。

美術館で少し経済学を学んだ。
 (純子)
森川ご夫妻:
 広大なカテドラルには驚きましたが、その中で見たコロンブの棺の印象は
強烈でした。まるで王か聖人のような扱いで、彼がいかにスペインの繁栄に寄与
したかがわかりました。

 
うな日本人には彼は王の命令で大西洋を横断しアメリカに到達したと
ばかり思っていましたが、実はスペイン帝国による膨大な富の収奪の門を開いた

貢献者として評価されていたようでした。

【マドリッド Madrid

 スペインの首都・マドリッドは標高655mのイベリア半島のほぼ中央に
位置する。マドリッドは、9世紀後半、イスラムのトレド王国の北、及び
北西を守る砦として建設され、当時は小さな集落であった。

 11世紀後半に、レコンキスタのアルフォンソ6世により、マドリッドは
キリスト教徒の手に奪回される。そして、1561年、フェリペ2世はマド
リッドに王室を移した。マドリッドはスペイン帝国の中心となり、貴族及
びその一族郎党、芸術家たちが集まり、急激に人口が増加していった。


<マヨール広場 Plaza Mayor

4階建ての建物が四方を囲んでいる落ち着いた雰囲気のある広場。レス
トランのテラス席で冷たいビールを一杯飲む。

方形のマヨール広場の一隅に洗濯物が風に揺れてる
En un rincón
 del cuadrilátero
 de la Plaza Mayor
 la ropa tendida
 se balancea
 con la caricia del viento.
                   
(Plaza Mayor)

<王宮 Palacio Real

1764年に完成した王宮は、現在も公式行事に使用されている。たまたま、
訪れた日に公式行事が催されるとのことで、王宮を見学することはでき
かった。

スペインの国旗の上に王室の旗はためき騎馬衛兵見ゆる
Sobre la bandera española
 la de la real casa
 se bambolea.
 Y yo contemplo
 de a caballo
 la real guardia.
                
(Palacio Real)
 

<プラド美術館 Museo del Prado

1819年にスペイン王家のコレクッションをもとに、王立美術館として開館
する。絵画だけでも8000点を超えるという 

観光客ガイドの長き説明に名画もゆるりと鑑賞できぬ
Explicación río
 del turístico guía.
 ¡Qué difícil del cuadro
 contemplación tranquila!
                 
(Museo del Prado)

<ソフィア王妃芸術センター Centro de Arte Reina Sofia

20世紀の現代美術・絵画が集められている。

抽象画の既成概念飛び散りぬ心ゆくまでゲルニカ観れば

Contemplando el Guernica
 hasta llegar al gozo
 las ideas abstractas
 se desintegran.
             
( Museo Reina Sofía)

<アトーチャ駅 Estacion de Atocha

熱帯雨林の湿度を肌に感じながら、階上レストランのテラスで夕食をとる。

構内に熱帯雨林の環境を創り出したる発想の妙
De la estación
 un bosque tropical
 la idea.
 ¡Eureka!
              
(Estación de Atocha)

<レティーロ公園 Parque del Retiro

もともとは王家の所有していた庭園であったが、マドリッド市に寄贈され
現在は市民の憩いの場所になっている。

広大なレティーロ公園を散歩する地図を覗いて辺りを確かめ


<マドリッドの印象・感想>
森川ご夫妻:

 大都会で歩く人の早さも東京並みでした。街角でみた中央郵便局の標識に
は二重の意味で驚きました。スペイン語、フランス語、
日本語で「郵便宮殿」
とあり、いかに日本人の観光客が多いか
いうことと、古い何かの宮殿で
あった建物が郵便局として使われ
ている歴史遺産の豊富さです。 


 やはり一番印象深かったのは「プラド美術館」です。非常に親しみやすい
雰囲気で楽しく名画と接することができました。名画のすばらしさはいろい
ろ紹介されていますから改めて申すこともあ
りませんが、私が少し変わった
ことで感心したのは入場料の安さでした
。また多くの小学生が先生に引率さ
れて楽しそうに見学していました。小さいうちから本当の美しさに接するこ

とはすばらしいことと感心するとともに、なんとなく芸術にたいする姿勢の

余裕のようなものを感じました。

根本ご夫妻:
 グランビア、アルカラ通り、プエルタ・デ・ソル、マヨール広場王宮、
スペイン広場へと、中心部の街並みの景観をじっくり堪能
できたことがうれ
しかった。街中にこんなに美しく広々とした所
があるのかと思わせられた、
レティーロ公園も印象的だった。
(久照)

<プラド美術館> 
 
マドリッドでプラド美術館が一番のお目当てだった。入館と同時にベラスケ
スの「ラス・メニーナス」を鑑賞
する。しばし、釘付けとなる。今にも絵の
中の人物が動き出すの
ではないかと感じた。
 ゴヤの「ラ・コンデサ・デ・チンチョン」を見てチンチョンの古城を思い
出す。「戦争の惨禍」など、ゴヤの描く黒く暗い作品
の数々に人間の内面が
深く表現されていることに気付く。(純子)

【チンチョン CHINCHÓN

マドリッドから南東に車で40分走ると、オリーブ畑に囲まれた小高い丘の
上に中世の町が現れる。


<古城 Castillo

崩れゆく古城の翳りを如何にせん円筒の塔も無残な姿に

Resaca sin remedio
 del viejo,
 destartalado castillo.
 Torre redonda,
 triste ruina.
           
(Viejo castillo)
 
にんにくの店 Tienda de ajos
うす暗きにんにく店ににんにくの臭いしみたる翁たむろす
En la penumbra
 de la tienda de ajos,
 olor aspirado
 por la tertulia
 de ajados clientes.
               
(Tienda de ajos)

<ゴヤの家 Casa de Goya

高台の小道の際にひっそりとゴヤの住み居し質素な家あり

Enfilada en el callejón
 de la alta colina
 simpleza de la casa
 que Goya habitara.
            
(Casa de Goya)
 

<チンチョンの印象・感想>
根本ご夫妻:
 チンチョンの古城の周辺にも可憐な草花が咲き、その中にアマポーラ(ひなげし)
の赤も風にゆれていた。修道院を改装した
「パラドール・デ・チンチョン」に宿泊し、
静かで落ち着いた
古風15世紀の建物とのこと)な雰囲気の中で、旅の疲れを癒せた
ことが何よりだった。

 
マヨール広場の上の教会で、折りよくミサが行なわれており、ゴヤの「聖母聖天」
を目にすることができた。

 買い物に出た町外れのスーパーで、母親と一緒の
34歳の女の子が、ショッピング
カートの上から、私に
Hola!私もHola!、そして再び出会い、Hola!、可愛い幼児と
楽しくもうれしいひとときであった。(純子) 

森川ご夫妻:
かわいらしい小さな町。宿泊したパラドールの雰囲気のすばら
しさにすっかり満足いたしました。   

【アランフエス Aranjuez

18世紀後半、タホ川沿いの緑豊かな地に建てられた王家の離宮と、
それに隣接する広大な庭園。当時の華やかな王家の生活が見てとれる。

水鳥は静けき離宮の影うつす緑の流れに身を任せいる
Las aves acuáticas
 se confían a la verde corriente,
 sombra chinesca
 del silencioso palacio.
                 
(Palacio y Río Tajo)

とりどりの花に包まるる離宮には心なごます女神すみおり
En el palacio rodeado
 de un bouquet floral
 viven las ninfas,
 reposo del alma.

彷徨えるわれの心に花園は「ゆるやかに生きよ」と囁きかける
A mi espíritu perdido
 el jardín le susurra
 su vida sin prisas.
               
(Palacio y jardín)

<アランフエスの印象・感想>
 森川ご夫妻:
 広大な庭園と王家の離宮、当時の王たちの優雅な時間のすごかたはなかなか庶民
には想像もつかないものでした

根本ご夫妻:
 王家がタホ川で舟遊びに用いた船が展示されている「王家の小舟博物館」に向か
った。かっての船着場が近くにあった。イサベル
女王ほか、王家が使った豪華に
装飾された数艘の舟と、当時の舟
遊びの様子を描いた絵画、その他船舶や海運に
関する資料等が展
示されていた。
 
その中でも、フェリペ5世がベネチア伯爵から贈られたという、木彫りで金ぴか
に飾られた大型のゴンドラが目を
ひいた。両岸の木々の緑を映しながら、傍らを静
かに流れるタホ
川を眺め、当時の優雅な光景を思い浮かべてみた。(久照・純子)

【トレド Toledo
トレドは、イベリア半島最長のタホ川に三方を守られた急峻な丘の上にあり、
幾度もスペインの歴史の中で主要舞台を務めた。このため、町全体がさながら
歴史博物館のようになっている。

1085年、レコンキスタのアルフォンソ6世は、トレドをイスラムより奪回し
12世紀前半から13世紀後半にかけて、トレドは西ヨーロッパの知識人
の強い関心の的となった。トレド翻訳学派と通称される知的翻訳作業がイス
ラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒の各学者たちの協同作業によって進め
られ、ラテン語に翻訳された哲学、数学、天文学、医学などが、ピレネー山
脈を越え、西ヨーロッパへと伝えられた。

トレドは、中世末期から近代初期にかけて、スペイン議会の場ともなれば、
まだ決まった首都を持っていなかったスペイン宮廷の一時的な逗留地ともな
った。
白昼のトレドの町はゆらゆらと蜃気楼の如浮き上がりたり
Bajo la luminosidad del día
 Toledo se levanta
 suavemente
 cual espejismo.
               
(Toledo desde la colina)
 

<ソコトレン Zokotren
ソコドベール広場からミニ観光列車に乗り、45分かけてトレドを周遊する。

にわか雨ソコトレンには窓はなしトレド周遊はずぶ濡れとなる
<カテドラル Catedral
スペイン・カトリックの総本山である大聖堂は1226年に着工され、1493
に完成した。

雨に吹かれ聖堂に難を逃れんと走りこめども扉は開かず


聖堂に赤と緑の光彩の天より舞いて邪気をつつめり
Filtrada luz celestial
 roja y verde
 enlazada
 en la catedral
 danzando envuelve
 las ideas del mal.
                    
(Catedral)

-聖具室  Sacristia 
エル・グレコの陰影ふかき自画像にするどき眼光の宿りいて
El Greco,
 del autorretrato
 profundo relieve,
 mirada penetrante
 en su luz.
              
(Autorretraro del Greco)

<レストラン>

午後8時夕食とるは我らのみワインのつまは採算のはな
(レストラン経営の採算気にする人もいる)
(9時半過ぎれば空席はなし)


<トレドの印象・感想>
根本ご夫妻:

 妻と二人でサント・トメ教会を目指し、お目当てのグレコの大作「オルガス伯爵の埋葬」
を鑑賞し、次に激しい雨の中をタベーラ
病院に向かったが、すでに閉館となっていた。
 
待合わせ場所のソコドベール広場へ戻るのに、何回も道を尋ね、必死の思いでずぶ濡れ
になりながらなんとか辿りついた。思い込みで歩くと
トレドの迷路の深みにますますはま
り込む経験をした
妻にはただただ平謝り。しかし、その夜、パラドールから見たトレド
の夜景が、心を慰めてくれた。(久照)


森川ご夫妻:
 スペイン各地で見てまわったカテドラルの中でもこれは特大規模で立派なのに驚きまし
た。堂内は美術館のようにたくさんの宗教
画が飾られていて、中でも聖母像のやさしい目
の表情はわすれら
れないものでした。

【セゴビア Segovia

エレスマ川(Rio Eresma)とクラモレス川(Rio Clamores)に挟まれた町で、
両河川の合流地点に、カトリック両王が一時居を構えたアルカサルがそびえ、
アルカサルから旧市街へは城壁が延びてい

セゴビアは、11世紀にレコンキスタのキリスト教徒によって奪回され、羊毛
産業と牧畜による経済発展を基盤に、軍事的に最も強力な都市となった。


<ローマ水道橋  Acueducto Romano

1世紀前後に建造されたローマ時代の水道橋は、花崗岩の切石を積み
上げた128個の2層アーチからなり、全長約813mに及ぶ。

石積みの水道橋の長さをば体感せんと橋に沿うて歩

延々と続く巨大な水道橋は接合材なしに築かれたとや

如何にして築かれしやと議論しつつアーチの積み石の妙に舌まく


<アルカサル Alcazar
ディズニーの「白雪姫」の城のモデルになったと言われているアルカサルを
何度も眺めやる。
アルカサルの小さき窓より白雪の手をふる姫の姿捜さん
Y voy buscando
 la mano de Blancanieves
 saludando
 desde las ventanitas
 del Alcázar.

優雅なる光り輝く尖塔に白雪姫の知性を想う
Al contemplar
 la brillantez y elegancia
 de las torreadas picas,
 sueño con Blancanieves
 de inteligencia cenit.
                       (Alcázar)
 

<セゴビアの印象・感想>
森川ご夫妻:
 なんといってもローマ水道橋です。これが2千年も前に造られたとは信じら
れません。現在のようなクレーンもない時代に造られた何十メートルもの高さ

の巨大な建築物でありながら、どの石一個をはずしてもガラガラと崩れてしま

いそうなまったく無駄のない構造(静定構造)です。

 
しかしその美しさはなんと言ったらよいのでしょう。ただ大きいだけのピラ
ミッドや万里の長城とは全く違った巨大建造物です
。改めて古代ローマ人の高
い能力に感心。

根本ご夫妻:
 紀元前1世紀に建造されたローマ水道橋のこの遺跡が、どのようにこれほど
の大工事が進められ、また、今のような姿で保存され
て来たのかということを
考えると、ただただ驚きを感じ、先人の
大偉業に理屈ぬきに敬服するのみであ
る。
(久照)     

 車が街に近付くにつれ、雪山が迎えてくれる。アルカサルへは、クラモレス
川沿いの、春まだ浅い新緑の美しい遊歩道をたどった。

 遊歩道から崖の上のアルカサルを見上げると、今まで見てきたのどのお城
よりも優しく、美しい。合流するエレスマ川の水が冷
たい。ぐるりとお城を巡
り、急な崖に付けられた道を登ると、お
城の正面に出た。(純子)

 <スペイン歴史探訪の感想>
根本ご夫妻:
 他のヨーロッパ諸国と比較して、特異な歴史を歩んだスペインが持つ多数の世界遺産の
いくつかをはじめとして、歴史上重要な位置を占める数々の史跡とそれが保存されている

その土地の姿を、そして、いくつかの美術館や博物館を、決して急ぐことなく、じっくり

と楽しんで来ました。


 また、ときには観光客が余り寄り付かない静寂な小道をたどったり、様々なスタイルの
レストランやバルでの食事、あるいは地元の人との思いがけぬ交歓等、時間的にも空間的

にもパックツアーでは、到底味合うことができない、貴重な体験を重ねることができまし

た。(久照)


<スペインに咲く花々> 
 オリーブ、オレンジの花と果実、藤の花、ジャスミン等が、各地の庭園で
5月の花とし
て仄かな香りを届けてくれる。ゼラニュームの鉢は、家々の窓辺や壁に美しく飾られてい
ます。木や草花は日本でも咲くものが多く、名前を思い出しながらの植物鑑賞の旅でもあ
りました。この旅の思い出と体験が、私の心身に浸透してきます。(純子)