【源氏物語】を詠う ~紫式部~
 瀬戸内寂聴訳 
彷徨い人 中島孝夫
 スペイン語訳:アントニオ ドゥケ ララ
2021年1月23日(更新)
《夕顔(源氏の君17歳)》
YUGAO (Hikaru Genji 17 AÑOS)

* 乳母の
   家の傍らに ま新しき垣根を
    めぐらせた家が目につきぬ * 源氏の君は
   大弐の乳母の病気見舞いに
    乳母の家を尋ねたり

Vio que al lado
de la casa de la nodriza
había una casa
con un seto nuevo.
Hikaru Genji para ver
a la antigua nodriza enferma
fue a la casa de la misma.
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* 護衛の
   随身が お前に膝まづきいいぬ
    ”夕顔と申します” ~~ * 源氏の君は
   ”そこに咲いているのは
     何の花”とつぶやきぬ ~~ * 源氏の君は
   板塀に青々と延びている
    蔓草に目をやりぬ ~~ * 源氏の君は
   どういう女たちかと
    好奇心をかきたてられぬ ~~ * 美しき
   女の影が 簾を通し
    ちらちらいくつも見えたり

Hikaru Genji
Murmuró:
“¿Qué flor es esa
que crece ahí?”
Hikaru Genji
se fijó en la yedra
que cubría la
empalizada.
Hikaru Genji
sentía mucho
interés por saber
qué mujeres eran.
Se vieron a
través de las
persianas las
bellas figuras
de varias mujeres.
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* 女童は
   随身に扇を渡し言いぬ”この上に
    花をのせて差上げて下さい” ~~ * 女童は
   随身に よい匂いのたたよう
    白い扇をさし出しぬ ~~ * 愛らしい
   女童が引き戸口に出で来て
    手招きしていたり ~~ * 源氏の君
   おっしゃいぬ”みじめな花の宿命だね
    一房折りて来なさい” ~~ * ”こういう
    ささやかで あわれな家の垣根に
     咲くものでございます”


* 源氏の君は
   惟光に聞きぬ”隣の家には
    誰が住んでいるのか” ~~ * ~心あてに
    それとぞ見る白露の
     ひかりそへたる夕顔の花~ ~~ * 扇には
   風流な筆跡で歌が
    書き流されてありたり ~~ * この扇を
   使い馴らした人の移り香が
    しみついていたり ~~ * 源氏の君は
   乳母の家を出ようとし
    先ほどの扇を目にしたり


* ~寄りてこそ
    それかとも見め たそかれに
     ほのぼの見つる 花の夕顔~ ~~ * 源氏の君は
   懐紙に歌を一首書かれ
    随身に持たせてやりぬ ~~ * 源氏の君に
   歌を詠みかけてきた
    女の心意気が捨て難かりけり ~~ * ”揚明の介を
    している者の家で
     妻は年若く風流好み” ~~ * 惟光は
   隣の家の管理人に聞き
    源氏に伝えたり


* 源氏の君は
   夕顔へのいとしさが
    日々に募りていたり ~~ * 夕顔の女も
   源氏の君については
    腑に落ちない気持ちでいたり ~~ * 源氏の君も
   名を明かさず 身なりも
    やつして通いていたり ~~ * 惟光には
   その女の素性を確かめることは
    できなかりけり ~~ * 惟光は
   源氏の君が あの家に通えるよう
    段取りを取りつけぬ


* 源氏の君は
   夕顔のところへ通う時は
    狩衣を着て変装したり ~~ * 夕顔は
   深窓の高貴な姫君と
    いうわけでもなかりけり ~~ * 夕顔は
   素直で もの柔らかに おっとりと
    初々しさがありたり